口コミ・評判・レビュー「しるべ」

漫画「聲の形」 耳の聞こえない少女。綺麗事に逃げない斬新な物語

聲の形

漫画「聲の形」(こえのかたち) 大今良時著
週刊少年マガジン連載中

耳の聞こえない少女と、その周囲の人間たちが織りなす青春群像劇。

……とだけざっくり書いてしまえば、それほど魅力的に伝わらないかもしれません。
しかし注目していただきたいのは、この作品が聾唖者をテーマに添えておきながら連載雑誌が少年誌という点であります。

実はこの作品、マガジン編集部の間でも問題視されておりました。
作品として賞を受賞していながらも、「内容がヘビーで少年誌向きではない」との意見が出たためでした。
しかし読み切りとして本誌に掲載されるや否や怒涛の大反響。あっという間に連載が決定したのでした。

当時ツイッターでもかなり話題となり、なにを隠そう私もツイッターでの反響ぶりを見て、急いでコンビニまで走り久々に立ち読みなんてものをしてしまったのでした(笑)

一読して、すぐに納得。
この作品が問題視されつつも、多くの人の心を捉えた理由。

それは漫画に関わらず障がい者を主題とした作品に多く現れがちな、「綺麗事に終始する」ということが全くなかったからです。


小学六年生の主人公・石田将也の通うクラスに突然、耳の聞こえない少女西宮硝子が転入してくる。

将也含む、多くのクラスメイトは耳の聞こえない硝子を「得体のしれない異物」として認識。非協力的な担任教諭の影響もあって、次第にハードなイジメへと発展していく。

やがてイジメは学校や保護者に知られることとなり、そのイジメの全責任を負わされた将也は仲の良かった友達にも裏切られ、逆にイジメられる立場となってしまう。

西宮が転校してしまった後もイジメは続き、将也ははじめて孤独だった硝子の気持ちを知ることとなり、将也の心にも変化が生じていく……。


そして時は過ぎ、将也も高校生になったある日。

ついに将也と硝子は運命の再会を果たす。

補聴器を何度も破壊するまでに酷いイジメを行った石田将也。なにをされても反抗せず黙ってイジメに耐えていながらも最後に将也と殴り合いのケンカをした西宮硝子。

成長した二人が出会う時、再び物語は動き出す。



このあらすじの中で、硝子は孤独で本当に誰も味方がいないのです。
当然味方がいなければ社会的弱者である硝子は生きていくことができないので、このあとの二巻・三巻と続く中で味方となるキャラクターは出てくるのですが、
第一巻では小学校という小さな世界で生きる石田将也視点の物語。

小さな世界ながらも、子供にとっては小学校は世界のほぼすべて。その世界において、ひたすら硝子は救われず、虐げられる。
そこに恐ろしいくらいのリアルを感じます。この少年誌とは思えないリアルさが、掲載を渋られた主な原因でしょう。


当初、この衝撃的な内容がいわゆる一発屋的なものに終わるんじゃないかと思い、連載が決定した時私はあまり期待していませんでした。
というのも、迫害される聾唖の少女と誰も救おうとしない世界、それが衝撃であり「ウケた」要因であるとすれば、今後の展開として「成長し改心した将也が徐々に硝子と心を通わせていき、二人は関係を深めていく……」なんてお話がなんとなく想像できてしまったからです。


しかし、違いました。
私は「聲の形」を、二巻・三巻・四巻と買い続け、今も新刊の発売を心待ちにしています。

確かにお話は、前述の「将也と硝子が関係を深めていく」展開になっています。
しかしそれでも魅力が色あせないのは、このレビューのタイトルにもあるように「綺麗事に逃げない物語」だからです。

その内容は、ぜひとも皆さんにも触れていただきたいものです。
将也と硝子の家族・友人関係を巻き込みながら、物語の核心は、将也とともに硝子を迫害した小学校時代の友人たちとの再会。
かつて弱者をいたぶった彼らはそのことを反省しているのか、していないのか、なにを考えているのか、そして将也・硝子と出会って今度はなにを思うのか。

心揺さぶられる人間ドラマがそこにあります。
ぜひ、書店で手に取ってみてください。


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